● 本日の価格上昇は新規需要による期待ではなく、需給調整と心理の揺り戻しによる反発と考えられる。
● SOPRは1を下回ったままで、損失売却が始まった段階にあり、底打ちを示す構造には至っていない。
● 中期トレンド判断には、SOPRの1回復定着と現物主導の資金流入確認が不可欠。

本日のビットコイン価格上昇を受け、市場では「底打ちではないか」「トレンド転換の兆しか」といった見方が出始めている。しかし、この動きを評価する際に重要なのは、価格の上昇率そのものではなく、その上昇がどのような構造の上に成り立っているかである。

まず整理しておきたいのは、「反発」と「トレンド転換」は本質的に異なるという点だ。ビットコイン市場における反発とは、下落トレンドや調整局面の途中で起きる一時的な価格上昇を指す。多くの場合、これは新規需要の流入によるものではなく、需給の歪みや心理の揺り戻しによって発生する。下落、不安、悲観が先行した局面で、外的イベントや材料をきっかけにポジション調整とショートカバーが同時に起こり、短期間で大きく戻す──これが典型的な反発の構図である。

反発が起きるメカニズムは、主に四つに分解できる。第一に、下落局面でショートが積み上がり、ロングが整理され、先物建玉が一方向に偏ることによるショートカバー。第二に、FOMCや金融安定策、政治イベントなどによる「最悪シナリオの後退」が、悲観の修正をもたらすこと。これは前向きな成長期待というより、「思っていたほど悪くなかった」という評価に近い。第三に、心理的・テクニカル節目(大台水準、過去の取得コスト帯、200DMAや365DMA)で機械的な買いが入りやすい点。第四に、含み損の増加によってセンチメントが極端に悪化し、「もう十分下がった」という錯覚が生じることだ。ただし、価格が底に近いことと、市場構造が底に近いことは同義ではない。

この点を検証する上で、添付のSOPR(Spent Output Profit Ratio)は重要な示唆を与える。SOPRは、実際に動いたビットコインが利益で売られたのか、損失で売られたのかを示す指標である。SOPRが1を上回る場合、売却は利益確定が中心であり、1を下回る場合、損失を受け入れて売却されるコインが増えていることを意味する。

直感的に言えば、SOPRが1を下回る局面とは、「本当は売りたくなかったが、このまま保有するリスクを嫌って、損でも手放す参加者が増え始めた状態」である。これは売りが終わったことを示すサインではなく、損失の受容が始まった段階に過ぎない。過去のサイクル(2018年、2020年、2022年)を振り返ると、SOPRが1を割り込む局面は、底ではなく弱気相場の初期から中盤にかけて繰り返し出現している。

今回のチャートでも、2025年3〜4月、2025年11月、そして2026年1〜2月にかけて、SOPRが1を下回る局面と価格の反発が重なっている。しかし、いずれの局面でも共通しているのは、反発後にSOPRが1を明確に上回り、安定して定着する動きが見られていない点だ。上抜けても短期間で押し戻され、利益確定の連鎖が回復していない。これは、反発が起きても市場全体の損益構造が改善していないことを示している。

以上を踏まえると、本日の価格上昇は「中期的な期待が織り込まれ始めた上昇」というより、「弱気相場入りを確認する過程で起きた反射的な反発」と位置付けるのが妥当だろう。現時点では、現物主導の出来高回復やETFフローの持続的な改善、ステーブルコイン供給の拡大といった新規資金流入の裏付けは限定的である。

今後30日程度の視点で重要になる検証ポイントは明確だ。第一に、SOPRが1を回復し、複数週にわたってその上で推移できるか。第二に、反発局面で現物主導の需要が伴うか。第三に、調整局面での損失実現が鈍化し、「売り圧の枯渇」が確認できるか。これらが揃わない限り、反発はあくまで反発にとどまりやすい。

結論として、今日の価格上昇は安心材料というより、市場構造を見極めるためのテスト局面と捉えるべきだろう。反発は期待ではなく、検証のフェーズに入ったことを示している。

オンチェーン指標の見方

SOPR(Spent Output Profit Ratio)とは SOPRは、実際に動いたビットコインが「利益で売られたか、損失で売られたか」を示すオンチェーン指標。1を上回ると利益確定が中心、1を下回ると損失を受け入れた売却が増えている状態を意味する。市場参加者の心理と需給構造の変化を把握するために用いられる。

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